院試の余熱で資格試験
これは eeic (東京大学工学部電気電子・電子情報工学科) Advent Calendar 2019 - Qiita の 3 日目の記事です。
2 日目: segfaultさん
情報熱力学入門:情報理論のその先へ - non-equilibrium
4 日目: ずんずんさん
1. はじめに
はじめましてのひとははじめまして、eeic B4 の かるぴすと申します。タイトルの通りの話をします。
前半では、なぜわざわざ院試後に資格試験?について書きます。後半では、この秋受けた応用情報技術者試験の受験記を書きます(まだ結果が出ていないのですが)。
アドベントカレンダーの前菜として、適当に読んでいただければ。
2. なぜ院試後に資格試験?
まだ院試を受けていない方々には申し訳ないのですが、院試は想像以上につらい。もう 2 度とやらんというお気持ちになります。そのうえでさらに試験を受けようとするのは、ある種修行のように思われるかもしれません。
ですが、あえてこの記事では、院試直後だからこそ、その余熱を活かして勢いで試験を受けちゃえばいいのでは?という提案をしたいと思います。以下、一般的な理由から、eeic 特有の理由まで、順に述べていきます。
2.1 秋は資格の季節らしい
このあたり( 各種資格 試験日カレンダー|資格の講座(社会人講座)|<資格の大原> ), ( 資格カレンダー - 2020年10月 - 資格の王道 )をご覧いただくとわかるように、秋は様々な資格試験が行われます。春は年度初めで慌ただしく、冬は天候による交通支障が懸念される、といった理由から秋に集中するものと思われます。
ですので、院試を終えて1, 2か月後というのが、様々な試験を受けるのにちょうどよいタイミングとなります。かなり難しい試験を受ける場合は措くとして、1, 2か月あればある程度の試験には備えることができそうな気がしませんか……?
以下、eeic に関連しそうなものをいくつか取り上げます。ものによっては年に複数回試験があるものもありますが、9 ~ 12月に絞って記載しました。試験日など、詳しく正確な情報を知りたい場合は HP を見てください。
電気主任技術者 (8, 9月)
一般財団法人 電気技術者試験センター
いわゆる電験。一種~三種があるが、一種はおそらく仕事で電力系に携わっているひとでないと受からないのでは……? 二種、三種は院試専門科目に関連しているので、法規以外は院試勉強と兼ねることができるかもしれない。基本情報技術者、応用情報技術者、各種スペシャリスト試験 (10月)
IPA 独立行政法人 情報処理推進機構:情報処理技術者試験・情報処理安全確保支援士試験
eeic の情報系の授業と関連が深いので、院試後から対策を始めても受けやすい。基本情報・応用情報は各分野まんべんなく出題され、スペシャリスト試験ではさらに各分野に特化した問題が出題される。情報という名を冠しているが、後半の体験記でも述べるように、応用情報までなら電電でも十分対応できると思う。数学検定 (10月)
実用数学技能検定(数学検定・算数検定) | 公益財団法人 日本数学検定協会
院試数学を活かすなら。1 級が大学での微積・線形・基礎統計に対応している。統計検定 (11月)
統計検定:Japan Statistical Society Certificate
データサイエンス、機械学習が流行る時代だからこそ、統計の理論を知っておくのは良さそう。2 級は駒場の基礎統計程度。準1級(春のみ)は 2 級に加えて応用的トピックに関する理解が問われる。1 級は数理統計に関する理論と応用を問われる。院試が終わってから対策を始めるなら 2 級が無難そう(計数の授業などを取っていたひとはいきなり 1 級でもいけるのかもしれない)。TOEIC (9,10,11,12月)
【公式】TOEIC Program|IIBC
資格試験とはちょっとテイストが異なるが、院試で英語の勘を取り戻して受けてみるのはよいかも。日本企業の就活にはいまだに使われているようですし……。
2.2 "受験勉強"の習慣を活かす
普段の定期試験であれば、持ち込み資料を作ることができたり、過去問を活用することができたりするので、それほど時間をかけない(かけられない)場合が多いかと思います。
ですが、院試はさすがにそうはいかないので、多くのひとは、院試前 1 か月くらいは学科の授業の復習や試験の解き直しなどの "受験勉強" をします。電車内でも、普段なら Twitter を眺めて過ごすところを、参考書を読んだりすることもあるかもしれません。
そのようにして取り戻した "受験勉強" の習慣を、院試が終わったあとも続けたら、さいきょーになれると思いませんか? 100 % 続けるのは他のタスクの都合上難しいかもしれませんが、0 % にしないだけでも効果はあるはずです。
2.3 院試直後に研究のことだけ考えるのはしんどい
これは eeic 特有の問題かもしれませんが、弊学科では院試終了後 2 週間で卒論の中間報告書を提出し、さらに中間発表に向け準備しなければなりません。多くのひとは院試前 1 か月くらいは研究から離れていますので、院試終了直後からモリモリ研究するのはブランクの影響もありなかなか難しいところがあります。締め切りに追われる焦燥感のなか、研究だけに集中してもよいのですが、研究に慣れていない学部生が四六時中研究のことだけ考えていても、焦りが募る、考えがまとまらない、などの症状が起き、非効率この上ありません。
そこで、逆転の発想として、1 日のなかで研究以外のタスクに費やす時間を確保してみるのです。そうすると、気分転換になりますし、限られた時間で仕上げようとすることで、かえってうまくいく場合が往々にしてあります。受験勉強でも、同じ科目をずっとやっているよりは、科目を変えてみたり、場所を変えてみたり、といった気分転換が効果をもたらすことがあります。この研究以外のタスクとして、資格の勉強を入れてみるとよいのでは?というのがここでの提案です。
2.4 申込の注意
2.1 節で例示した試験のなかには、申込期限が院試前に設定されているものがありますので、院試後に何らかの試験を受けようとする場合、受けたい試験の申込期限には注意しましょう。
3. 応用情報技術者試験 (AP) 受験記
後半では、実際に筆者がこの秋に受けた応用情報技術者試験(以下 AP と記す)について書いていきます。これを書いている時点では、合格発表がされていないので、あまり偉そうなことは書けないのですが、何らかの参考になれば幸いです。
試験の概要は以下の通りです。
分野
テクノロジ (技術全般。セキュリティとかデータベースとか)
ストラテジ (経営戦略や法務)
マネジメント (プロジェクトの管理、サービスの管理)形式
午前・4 者択一式 80 問。6 割以上で合格。
午後・記述式 11 問から 5 問選択。セキュリティは必答。6 割以上で合格。時間
午前、午後とも 150 分
3.1 動機
筆者は電気電子工学科の電力系コースに所属しており、2A セメスターでは、ディジタル回路や情報通信理論といった情報系の授業もとりあえず履修しましたが、3S セメスター以降、電情のひとたちが履修するような授業を履修せずに過ごしてきました。
院試の季節になり、院試の問題について相談する電情のひとびとを見るにつれ、彼らが今までどんな授業を受けてきたのか、その一端でもよいから知りたいというお気持ちがわいてきました。そこで、情報系の知識全般を問う AP に目をつけ、試験ドリブンでざっくりと勉強してみるかと思い立ちました。
3.2 参考書など
ここでは、試験を受けるまでに利用した参考書やサイトを紹介します。
- a) キタミ式イラストIT塾 応用情報技術者
試験範囲の概要を理解するのにかなり役立つ。ゆるふわな感じで解説が進むので、院試直後のちょっと疲れた状態でもモリモリ読み進めることができる。これで全体像をつかめばあとは問題演習。レビューの中には「これに載っていない内容も出題される!」といったものが散見されるが、試験範囲すべてを事細かに記載するような参考書はたいてい途中で読むのがしんどくなるので、これくらいでちょうどいい。kindle 版があるので持ち運びに便利なのもよい。
- b) 応用情報技術者 午後問題の重点対策
午前の試験問題は 4 者択一のマーク式ですが、午後問題は記述式問題になります。問題の中からヒントとなる部分を読み取って、指定された形式で解答する必要があります。解答の書き方を読むだけでも参考になります。ただし、紙媒体のみなので、持ち運びはやや不便。
- c) 応用情報技術者 過去問道場
応用情報技術者過去問道場|応用情報技術者試験.com
控えめに言っても神。現在の試験形式になってからのすべての問題を出題してくれる。午前問題の対策は、ひたすらこれを解けば十分。
3.3 時系列
8月上旬
院試終わったら何をしようか考える。なんとなく、資格を取ってみるのもいいかと思いはじめる。電情のひとが AP を取っていたのを思い出す。
「AP って前提知識なくてもいけるか?」的なツイートをしたら、学科民から「へーきへーき!」といった趣旨のリプライをもらった記憶がある。8月中旬
受験申込締め切りが近かったので勢いで申し込む。8/28
院試終了。キタミ式の kindle 版を購入。
以後通学時などに読み進める。9月中旬
キタミ式読了。午後問題対策を購入。過去問道場を開始。
以後通学時は過去問道場を解く。10月上旬
午後問題対策を過去問道場と並行して進める。あまり捗らなかった。10月中旬
過去問道場の解答数が 1,000 を突破。午前はいけるやんという気持ちになる。10/20
試験本番。電車の便が悪いところに飛ばされる。
午前は公式の解答が出たので自己採(64/80)。OK!
午後は記述式で自己採できないので放置。今日に至る。
3.4 感想
概要を把握するのにキタミ式の参考書がかなり役立った。午前問題については過去問過学習でかなり伸びた。午後問題は出たとこ勝負感があってなんとも言い難いが、通っててほしい。
これだけで情報を応用できる人材には到底なれない気がするが、電情のひとたちが授業でやってきた内容に少し触れることができたように思う。また、意外とストラテジ・マネジメント分野の内容が興味深かった。IT 人材はプログラムを書くだけでなくプロジェクトをマネジメントする必要もあるんだなあと思った。
4. おわりに
資格を持っていることが、その分野の知識を習得していることを保証するか?と問われると、そうは言いきれない面もあります。しかし、資格を取ろうと勉強することでふんわりと身についた "知識の取っ掛かり" はどこかで役に立つはずです。大学を出た後も知識のアップデートをしていくための手段のひとつとして、資格試験の利用に目を向けてみるのもアリかなと感じた次第です。
追記
受かってました、わいわい!